30年間泣いていた<発達障害なんてない>

発達障害者雇用で就労していた筆者が、発達障害者が生きにくい社会についての考察や時事問題、自分&他のケース、独り言などをまとめました

<発達障害者雇用で働いていた筆者が、
発達障害者が生きにくい社会についての考察や時事問題、
自分&他のケース、独り言などをまとめました

発達障害者雇用は「誰のため」の障害者雇用なのか

(長文です)

先日、このようなコメントをいただいた。

 

精神3級の方で最低賃金で働いて生計を立てている親しい知人がいますが、僕はその方はすごく尊敬しています。 非正規雇用最低賃金で働くことに抵抗がありますか? その方達は働いているとは呼べないのでしょうか? 失礼ながら就労が無理というのは何かプライドというかこだわりも関係しているのではないでしょうか? とても発達障害の方の現状の確信を突いているブログだと思います。ぜひご意見頂けたら嬉しく思います。

 

「働いている」の基準の曖昧さ

 

私としては、働くことを全面に押し出すのであれば、それは「自立した」「1個人としての人生が確立することのできる」生き方が選択できる賃金を稼げる労働=労働の基本だと思っている。

 

男性優位モデルが崩れた昨今では、「女性も独立した働き方を!」とさまざまな労働改革がなされて、女性を無理やりに(と筆者は感じる)押し出す労働のあり方が整備されてきた。

これと同時に1億総活躍という政府の大号令とともに、障害者を雇用しようと躍起になっている人たちがいる。

身体障害者は身体の機能を失ってしまい、なかなか就労機会に恵まれなかった人もいて、そういう人たちの中には良い環境で楽しんで働けている人もいることだろう。

 

だが、精神系や発達障害はそうした自身の「機能」不全ではなく、社会のニーズに応えられない人のため、身体障害とはまったく異なる人種である。

特に発達障害においては精神になんら疾患がなく、五体満足であるにもかかわらず、「ビジネス界の一定の基準」が満たせない人を障害と呼んでいる気がしてならない。

発達障害者は、「ビジネス人材の画一性を求める社会の不健全さのために、障害者にならざるを得なかった人々」という言い方もできるのではないだろうか?

 

この法案が発達や精神障害者雇用にとって問題となっている点は大きく分けて2つある。

 

1つめは、現代で生存に優位な行為(=より多くのお金を稼ぐこと)に対して就ける職種と許容幅があまりにも狭いこと

2つめは、精神や発達の障害者は目で見て理解してもらえず、体調に波があるので1のような働き方ができず、他人とコミュニケーションがうまく取れず、怠けているようにも見えたりして、結果的に正規雇用になりづらいという点である。

 

定時出社、長時間労働、周囲との同調性…

これらすべてのビジネス人材の枠からはみ出した人=発達障害者ではないだろうか。

 

 これら雇用の問題をクリアしていかなければ、尖った能力を持つ発達障害も宝の持ち腐れで一生を終えることになってしまう。

そして、その「働く」行為が、1個人の独立した人生を送るために使われることができない賃金の低さにも問題がある。

 

 

ダイバーシティ「活用」にはほど遠い障害者雇用の現状

 

 

 発達障害者雇用の何が問題かといえば、こうした部分の機能が「障害」と呼ばれる程度に欠陥があってできない人に対し、そうした労働を求める「働き方の強要」にまず、第一の問題がある。

 

下記に挙げるのは発達障害によく挙げられる特性である。

 

  • 集中力がもたない
  • 興味のないことに対してやる気がない
  • 最後の最後でミスをしやすい
  • 奇抜で周りから浮く
  • 時間が守れない

 

これらの特性が、たとえば都心の大企業での事務職だとしたら、間違いなく困ったさんになることが必至だ。

 

しかし、これがたとえば自分の好きな分野のデザイナーであったり、フリーランスで自分の裁量のもとに自由に時間が組めるような環境であったら、どうだろう?

 

 

  • 集中力がもたない=過集中がある
  • 興味のないことに対してやる気がない=好きなものはとことん突き詰める
  • 奇抜で周りから浮く=独特のセンスがある
  • 最後の最後でミスをする、時間が守れない=しかし自分のこだわりの中では何時間も突き詰める

 

 

集中力がもたなくても、代わりに過集中するという特性がある。

また、いざとなった時のADHDというのは他人の何倍もの働きをすることもある(元看護師の沖田×華さんの漫画には、人手がなかった時に鬼のようなフロー状態に陥り患者を世話することができた例が書かれている)

また、営業職のADHDの中には、たまに人の心を掴むのが天才的な人もいる。

 

 

何も障害者に限ったことではないが、大企業病が蔓延する社会では、与えられた枠にあてはまる人間になれなくては意味がない。

そうした枠からはみだした人間に開かれた企業の職種のうち、発達や精神障害者継続してできる仕事が、果たしてどれだけあるのだろうか?

 

 


一人暮らしをしようにもできない

 

最近、一人暮らしをしようと試算していた。

発達障害の親は発達障害であることが多く、我が家も例に漏れずの過干渉する毒親のため。加えて私が感覚過敏で家族ですら会話が疲れる)

 

私がやろうとして断念した一人暮らしの概算である。

 

家賃 55000円

(※女性で一人暮らしでとなると、1階やセキュリティの甘い場所は避ける。家賃があまりにも高いという人は、賃貸マンションの募集をよく見てほしい)
携帯+通信費 9000円

スマホだけで平気な人はもう少し安い。インターネットが使えなければ何もできない時代である。贅沢ではない)
ガス代 6000円

(プロパンガス想定、都市ガスならばもっと安い。ただし地方では一般的である。もっと高い地域も)
水道 3000円(最低料金試算)
電気代 5000円
食費30000円〜(食費が値上がりしたのと消費税8%があるのでもう少し高くなるかもしれない)

その他雑費やローンの支払い 5000~20000円

交通費・医療費・交際費etc…

 

 

雑費などを除いて少なく見積もっても、日本では平均的な街で一人暮らしを始める上で108000円前後かかる。

ちなみにこれは前職の障害者雇用で得ていた給与とほぼ同じである。家賃の適正価格は給与の3分の1と言われていて、108000円しか稼げない私が住める場所が、一体どこにあるというのだろう?おそらく、大島てるに載っている物件しかないだろう。日本は最低賃金で働く非正規労働者にとっては、生活上のコストがあまりにも高すぎるのだ。

 

※シェアハウスは昔挑戦したが、コミュニケーション力に欠けるため常時人間関係にさらされることが多い環境に耐えられなかった。水回りの共有も綺麗好きな人なら大抵嫌である。また、シェアハウスは大抵壁が薄く、マンションと違って他人の生活音もアパート以上にある。自分の慣れた環境や家具を持ち込めないことなども精神的なバランスを崩しやすくなる。

 

公営住宅ならば少しのアルバイトでもぎりぎり生活していけるだろうが、私は毎回募集に出していても当選した試しはない。

障害者優遇倍率があったとしても、それを上回る数の人が応募してきて宝くじの当たりに恵まれるようなものである。

 

コメントをいただいた精神3級で生計を立てている人というのは、失礼ながらどれくらいの生活レベルをお持ちなのか、疑問である。

 

少なくとも自分は週5労働が週4→週2となるほど、ボロボロになった。

生活は乱れ、労働に心身を奪われて、頭がいつもフラフラしていた。

体温がもともと高かった自分が自律神経までやられたのか、ずっと震えながらオフィスにいたこともある。

食費の面でも、人間疲れている時は外食も多くなるし、一杯飲みたくなる事もあるだろう。

 

それらをすべて我慢してやっていけるほどの精神3級ならば、私の持っている精神3級の手帳とだいぶ中身が違うのではないだろうか? 

おそらく男性のご友人だと思うが、ホルモンバランスや男女の基礎体力の違いも考慮して考えてみても、精神3級内でもだいぶ幅があるのかもしれない。

(もしくは、私が低く障害等級を出されているか、その友人が努力をし、実は見た目にはわからないほど疲れている可能性もある)

 

男女差の性能の話をするとまたブログ1枠使わないと難しいのだが、とりあえず体力差と生理の有無でまったく違う生き物だということはそのうち誰かが言うと思う。男女の身体能力差は絶対的に平等ではないし、それは障害者労働でも考慮されるべき事例なので。

※また、仕事に対する捉え方も男性女性ではまったく違うので、仕事=「プライド」という言葉がコメントを書いた男性から来たのだとも思う。

 

 

賃貸住宅は払い続けなければ住めない

当たり前の話になるが、賃貸住宅では家賃が払えなくなった場合、すぐに追い出されてしまう。

つまり、生きているだけで1日あたり上記のコストを1/30した価格が必要となる。

そして、それは「労働を休まない、皆勤賞」が想定で、精神障害のように体調の波が不安定な人が最低賃金で働いていたら、とても払い続けられることなどできない。

 

自分は二次障害的にうつ病を抱えているが、発達障害由来と思われる体調の波と鬱屈した気持ちをずっと抱えているため、普通の長時間労働は不可能である。(オフィス内で他の人に見えない状態で、かるく発狂している)

 

私は人より3倍疲れる感覚があり、就労していた際には終業でヘトヘトになった体では混雑した長距離電車に乗れないため、稼いだお金でいつもカフェ等に入って十分休んでから帰宅しお金がなくなっていた。

会社近くに住むためには、やはり上記のコストがかかる。不可能である。

 

これを、ストレスにも弱く体調に波のある障害者が、精神障害3級という年金が出ない状態で、最低賃金で時折休むことを想定しながらどうやって払っていけるのだろうか?

「親が面倒を見てくれるから」という人もいるかと思うが、果たしてそれは独立した生活が出来ている人生と言えるだろうか?

障害者雇用促進の観点からはだいぶズレているだろう。

 最低賃金でフルに毎日働ける発達や精神障害の人がいたら、おそらくそれは上位1%くらいの強者だ。

 

コメントの方は

 

失礼ながら就労が無理というのは何かプライドというかこだわりも関係しているのではないでしょうか?

 

 というとんでもなく的外れな考えをおっしゃっているのでおそらく障害者側の人ではないと思うが、最低賃金で週5日8時間などというフル労働ができない身体なのに、見えない障害なので誰も苦しさやしんどさを理解してくれない、という方が正しい。

最低賃金だから働きたくないわけではないし、プライド<<<<<<心身の疲労と書けばわかるだろうか?

 

障害者雇用に関して、私のように人の3倍ストレスを受け、身体に苦しい思いをしている障害者もいる中、独立した生活もできないような最低賃金しか出さない労働ばかりでは、そのうちに「意味のない奴隷労働だ」と皆気付くだろう。

それは、労働者や1個人としての独立した人格や権利を与えずに、ただ搾取する方法である。

 

だから私が障害者就労を進めない理由

私は、はっきりいって「自立を約束しない労働促進法案」など、ただの「奴隷法案」だと思っている。

 

前提として、「周りの人々ができること」ができないのが「障害者」という括りである。 
その人たちを「自立支援」だの「平等に扱えるよう社会へ送り出す」だの美辞麗句を並べているが、数字を並べれば、一目で異常な法案だということがわかるだろう。

(障害がなくとも、不安定な非正規職でしか働けない人ももちろん私たちと似た環境にいる)

 

発達障害者を家庭に抱えている親御さんたちは、彼らが障害者労働をしたところで家を借りられるだけの十分な賃金を得られないこと無理に一人暮らしをさせても賃貸住宅では断続的にその家賃を払っていくことができなければたちまち生活が立ち行かなくなること日本の非正規最低賃金はあまりにも低すぎるということを念頭に置いてほしい。特に、近年では給与が上がらずどんどんサイズの減るお菓子なども話題となり、エンゲル係数が上がっている。

www.nikkei.com

>特に無職世帯にとって値上げは家計に打撃だ。高齢夫婦の無職世帯ではエンゲル係数が15年から1.7ポイント上昇の27.3%となった。

 

食べることは生命に直結する問題である。

食住を欠いては、人は生存できないが、それらの生命セーフティラインを手にいれるためには、先ほど述べたようなお金がいる。

 

これらを確保しつつ、ある程度の労働と引き換えに自立した生活が送れないのであれば、はっきりいって障害者が労働する意味などほぼないだろう。

(自立ができなくてもコメントをした人のように「就労=プライド」と見る男性の就労欲を満たすことはできるかもしれないが)

 

特に、心の病は身体障害と違い目には見えづらい。
職業を転々としがちな発達障害者にもいえることだが、二次障害である鬱が治らないままで通常の、いわゆる自立できるような程度の額が稼げる「長時間労働」に組み込まれたら、それこそ地獄の始まりである。


一度発症したうつ病寛解するには時間がかかるし、職場で毎回失敗したり、「人と同じことができない」ために疎外される発達障害者の場合は、労働がトラウマやうつの直接的なトリガーとなってしまう事が多い。
そんな人を「社会と同じルールで働け、正社員並みに長時間労働しなければ一人前の独立した生活は与えない」と前置きし、プライドを一段折ってから最低賃金で働かせ、障害者枠労働だけではまともに一個人の大人としてもやっていけないような賃金しか与えないというのは、おかしい。


以前「発達障害によってお金が稼げない人々は精神3級で障害年金を貰えず、寝たきりでもないうつ病の人が精神2級で障害年金をもらっているのでおかしい」という趣旨の記事を書いた。そしてその後、なぜか政府はそうした目に見えない障害の患者の年金打ち切りを提示した(のちに撤回)。

 

たしかにこの場合で見れば精神2級と3級の線引きはおかしいが、お金が稼げる精神の体力がないのは発達障害うつ病も同じ程度に見える。

学校教育では平均ラインに合わせた授業をするのか?という議題を教育討論番組でやっていたが、障害者雇用は教育と違い、平均となる社会人の収入金額がある程度分かっている。

生存するだけでも大変な障害者が「平等に」扱われるためには、まず障害年金で生存最低ラインが保障されることが先なのである。

その上で障害者雇用は生きる最低限度のお金を先に配り、そこから「ここ以上のふつうの人並に稼ぎたかったら就労頑張ってください」と肩を押すべきなのである。

 

お金がないなら財源は資産上位の人間から取って、下の生活できない人のレベルに流していくべきである。精神障害が理解されないのはそれが目に見えない病気だからに他ならない。

だからこそ、  間違っても「就職しろ」と障害を抱えた人の心身と銭をすり減らせて、「やれ障害者も働け!」と無理に急かすような環境を作り出してはいけないのである。

www.comhbo.net

 

 

 

コメント回答のまとめ

 

つまり、私が声を大にして言いたいのは、この法案はまったくもって、発達障害者個人の自立を前提にした法律ではないということだ。

身体障害ならば、管理労働に耐えうる精神を持っている人もいるため、一般企業や外資企業での就労で、障害年金を合わせ20万(中には外資など30万)を超える労働もある。

 

 

  • 非正規で何が悪いのか? →非正規であること自体は何ら問題ではない。
  • 最低賃金労働の何が悪いのか?→ 最低賃金労働それ自体は何ら問題ではない。

 

問題は、その2つが組み合わさっていることによって、その障害がある労働者が世の中でもっとも生きる生活上の保障を受けづらい属性になること(例;アパートの保証審査、自動車の購入、起業のための融資)、また、最低賃金は、日本では独立や生活を成り立たせるためにがあまりにも低すぎることが問題なのである。

日本の最低賃金は、食費や生存に必要な費用に対してあまりにも低すぎる。

 (障害者雇用関係なしに)

 
そんなものは障害者をただ痛めつけるだけの法案だし、やらなくていい。

 

どうしても労働しろというのなら先に障害年金を拡大し、最低生存ラインを確保した上で働かせるべきである。

一般人との格差を広げてどうする? 

 

www.change.org

発達障害者のための障害年金拡充のための署名を行なっています。

ご協力お願いします。

 

 

 

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